東海道五十三次 十四日目
宮(熱田神宮)ー桑名ー四日市
歩行距離 四十五キロ
一日の歩数 六万七千歩
腰痛で起き上がれない
良い日もあれば、悪い日もある。悪いことは大抵油断の中から生まれる。
昨日は体の調子が良く、思わず走り出してみたくらいだが、それが良くなかった。台風を無事やり過ごし、足のマメも硬くなってきて、これから本調子と思っていたのに。腰を痛めてしまった。
原因は、食べすぎだと思う。動いているから大丈夫だと思い、ここのところ、夜好きなだけ食べている。当初は昼抜きで歩いていたが、静岡辺りから、公衆トイレが少なくなり、コンビニで、トイレを借りることが増えた。すると、結局何かを買うことになり、都度、おにぎりやポカリやスポーツゼリーなどを、こまめに食べている。
痩せて帰ってくると家族に宣言したのに、これではまずい。また計画の引き直しだ。何よりこの腰痛をどうしよう。台風一過の涼しい秋風の吹く、良い天気であるにもかかわらず、私の体は今回の旅でも最も重い状態となっていた。
かがんでは、靴も履けないほどの痛みから、今朝はスタート。江戸時代は七里の渡しで対岸の桑名まで渡ったが、今は国道一号線が走っているので、そこをまっすぐに歩く。
横断歩道がない愛知県
相変わらず歩く人は少ない。車社会ではあるようだ。今日一日だけでも、国道一号線を歩いていると、何度も歩道橋の上り下りをさせられる。痛めた腰には辛い。
今日はあまり頭を使うこともない。ただひたすらまっすぐに、国道一号線を桑名目指して歩けば良い。ただ、昨日は軽くさえ感じていたザックがずっしりと腰に重い。
朝のうちは雲が日を遮り、涼しい風が吹いていたが、内実、その正体は強烈な向かい風だ。長男からもらった帽子が飛んでいきそうだ。子供から初めてもらったプレゼントをなくすわけにはいかない。お守りでもあるのだ。川をいくつか越えるが、その都度帽子を深くかぶり、手で押さえる。
坂がないのが救いだ。平らな道をひたすら前に進む。ただ座るところがない。
コンビニがなかったら、愛知県の皆さんは、トイレなどはどうするのだろう。チップまでは取られないが、何か買わないとならない。もちろん強制ではないが、マナーというやつだ。
トイレがない
災害時の対策としても、国道一号線のような幹線道路沿いの公衆トイレは、非常に重要なインフラのはずだ。津波の浸水域を示す看板は旧東海道沿いの至る所にあるが、他の災害時のバックアッププランは、大丈夫なのだろうか。
東京の港区は公衆トイレが至る所にあり、公共施設がいつでも避難場所となるように、準備が出来ている。旧東海道を観光の柱にするならば、トイレくらいは作っておいた方が良い。結局それが、自分たちの災害対策にもなるからだ。
木曽川を渡る前の、桑名市内には、ゼロメートル地帯があった。昨日の台風の後なので、どうかと思ったが、大した影響は無かったようだ。排水のシステムがしっかりしているのだろう。
七里の渡し 桑名
揖斐川、長良川を越えて、一キロ南へ下ると、七里の渡しの船着場跡だ、ここから三重県側の東海道が始まる。
三重県は愛知県と比べて、東海道に対する地元の人たちの愛を感じる。それは、一軒一軒の軒先に掲げられた、ここが東海道、であることを示すボードが、その気持ちを表している。
ただ三重県の場合、伊勢神宮がある。また、京都に近い分、より重層的な文化の重なりを感じる。とにかく腰が痛いので、一つ一つの立て板を今日は見ることができなかったが、一つ一つの説明書きに歴史的な経緯が記述されている。ゆっくり読みながら歩くと楽しそうだ。
歩きやすい三重県の東海道
道も工夫されている。歩道を広く取って、障害となるポールを立てて、車の速度を落とすような工夫を、旧東海道に施している。
桑名からが実は長かった。一昨日くらいから、アップルウォッチが途中で止まってしまう現象が起きており、総歩行距離が一目では分からなくなってしまったからだ。桑名から四日市までは十五キロほどある。桑名までが二十五キロなので、まだ半分近く残る状態だ。
痛む腰への負担を避けながら、よろよろと一歩一歩前に進み、四日市に着いたのは、午後五時過ぎだった。朝少し早めの六時半に出なければ、もうすぐ日が沈むところだった。
四日市で靴と軽量ザックを購入
十日しか履いていないけれど底の無くなった靴と、重くて臭いのに洗えないバッグを買い替えるために、駅前の近鉄デパートへ向かった。暑い時期に行う長距離の歩き旅。洗えるザックにしないと汗で臭くなる。使ってきたものは、宅急便で家に送った。荷物が少し軽くなり、靴も柔らかいものに変えた。ジョギングシューズなので、雨が降るとぐしょぐしょになってしまうが、いまはとにかく歩きやすさを優先した。疲れず前に進めることが大切だ。
あと四日。無事に京都へたどり着くのだろうか。腰の痛みが引いてくれることを祈って今日は眠りにつく。
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