最近エスカレーターに乗ると、歩かないでくださいと、アナウンスが流れています。
階段を歩くことと、エスカレーターを歩くことと、何が違うかと言えば、動いているか、止まっているか、ということ。
小学校の理科の時間に勉強しましたが、同じ方向に動いている限り、動いている階段も止まっている階段も、危険性に変わりはない。エスカレーターの上で歩くのがいけないとすれば、飛行機の中でも、電車の中でも、ましてや、地球さえ動いているので、地球の上で歩くことも危険なのでやめましょう、ということになる。新幹線なんてとんでもないスピードで動いているけれど、車内販売のカートが危ないので車内販売をやめましょう、という話は聞いたことがない。
転んだら下へ落ちるのは、エスカレーターでも階段でも変わらない。
私の場合、道のわずかな段差でつまづくことはあるが、エスカレーターで転んだことはない。
しかし、埼玉県では、エスカレーターで歩くことを禁止することを条例で決めたと風の噂で聞いたような気がする。条例は何を根拠に決まったのでしょうか。
歩いている場合と、止まっている場合とを比較して、歩いているときの方が、どれくらい危険度が増すのかを示すデータを、誰かが提示した、という話も聞いたことがない。
エスカレーターで歩くことが危険であるならば、動く歩道は何のためにあるのだろう。歩くよりも遅い速度で動く歩道は、歩けなくなったお年寄りを助けるものなのだろうか。そうとは思えない。
東京の恵比寿にある恵比寿ガーデンプレイスは恵比寿駅から遠いので、ビルができた当初から動く歩道があり、恵比寿ガーデンプレイスまで多くの人がその上を歩いていた。最近は行っていないので今どうなっているのかは知らないが、あれも今では歩かないでくださいと、アナウンスしているのでしょうか。
仮に誰かが怪我をしたとして、その原因はエスカレーターの作りにあるのであって、歩くことが悪いのではない。
私が生まれて、すでに半世紀以上の時が経ちますが、新型エスカレーターの登場というニュースは聞いたことがない。エスカレーターの角は尖っていて刃物のようだから、転んだら痛いだろうなと思うので、なんで転んでも痛くないようにしないのだろうと、ずっと思っている。転んだら痛いことがわかっているので、いつも転ばないように心がけている。だから転ばない。もしも怪我をする人が本当にいるのであれば、まずエスカレーターの改良をすべきだと思うけれど、メーカーがそのような新製品の発表をしたという記憶もない。
エスカレーターを歩くことは想定していないなどということをいう人もいるようですが、ならばメーカーはそのニーズに合わせたエスカレーターを開発して欲しい。五倍速で動くエスカレーターなら誰も歩かない。
たんにメーカーの努力不足の言い訳。
新素材の柔らかいエスカレーターや、エアバッグ付きのエスカレーターや、歩くなというのであれば、座席付きのエスカレーターを作れば、多くの人が座って移動できるので良いと思うけれど、そのようなアイディアをエスカレーターのメーカーから聞いたこともない。
都営新宿線の新宿駅では、わざわざ、ガードマンの方を雇って、通勤時間帯に歩けないようにエスカレーターの上で止まってくださいというボードを掲げて、ガードマンが歩けないようにエスカレーターの上で立って通せんぼうをしている。あれ税金でしょ?
下りも上りも、ガードマンが通せんぼう。上りのエスカレーターをわざわざ歩いて上る人を通せんぼう。なぜ?エスカレーターを上るのが危ないから?
つまづいて弁慶の泣き所を打たないように?
エスカレーターでなくても、階段でも転んだら痛いのは一緒でしょ?
と言いながら、本当の理由は分かっています。歩くことを前提にしていると、事故が起きた時にメーカーが訴えられるから。補償を求められるから。
こんなことだから、日本は停滞したまま今日も沈んでいく。