Just do it !

踏み出そう。やってみよう。考えるのはそのあとだ。


しこを踏むおじさん

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毎朝公園で必ず会う人がいる。お互いに存在は認識しているが、心の中で会釈をするように視線をそちらに向けるが、お互いに声を掛け合うようなことはしない。これが都市部でなければまた違うのだろうが、慌ただしい朝の時間、お互いの神聖な時間を拘束しないように、なんとなくお互いの時間を無為にしてはいけない、声をかけるのに憚られる空気感がある。

広場の向こうから朝日が上るところはとても神々しく、太陽の光を全身に浴びて毎朝心の中で手を合わせる。その同じ場所で会うのが、シコおじさんだ。

シコおじさんは、毎朝その公園で、太陽に向かって同じ手順でシコを踏んでいる。

丁寧にも履いてきたジョギングシューズから、五本指シューズに履き替え、その儀式を始める。

もともと相撲は神事であると言われる神聖なもの。エジプトで太陽は太陽神ラーと呼ばれていた。日本でも最高神の天照大神として崇められている。

儀式の全ての過程を見届けるわけではないが、毎朝その場所に到着するタイミングが微妙にずれるので、断片的にその儀式の一端を垣間見ることが出来る。

季節によって、太陽の位置が変わるので、少しずつその場所はずれていく。私はいつも同じ場所で太陽神を崇めるが、シコおじさんは太陽の向きによって、私の定位置から東にずれたり、西にずれたりしている。

私は太陽の光を浴びながら、首をぐるぐる回してコリをとったり、屈伸して身体を伸ばしたりしているが、シコおじさんは何度も何度も横綱の土俵入りの時のように、威厳をもってシコを踏み続ける。

ちなみに、そのシコおじさんはとても痩せている。鹿のような細身の足でシコを踏んでいる。