私はJリーグが始まった年に開局したCSスポーツチャンネルで番組制作の仕事をしていたことがある。その開局記念でJリーグの全試合放送ということを目玉にスタートアップの準備を進めていた。
まだ日本にプロ野球とゴルフしかプロスポーツがない頃で、サッカーの試合中継を見るのは、サッカー部の人たちだけ、という時代だった。
チェアマンの川淵さんが、ドイツのような、街ごとにチームがあり、地元の人たちが老若男女問わずに集い、地域の人たちが楽しめる施設と文化を日本中に作りたい、と話していたことに強く惹かれ、私たちのスタートアップとJリーグのスタートアップを重ねて、私たちも熱心にJリーグを応援していた。
私は鹿島アントラーズの担当だったので、鹿島スタジアムで試合前の生ジーコの練習などを見ることができた。本番中は中継車の中に入るので、実際の試合中のプレーはモニター越しにしか見ることは出来なかったが、今から思えば大変貴重な経験だった。
当時の日本のプレーヤーと世界のスタープレーヤーとの実力差は大人と子どものようなもので、と書くと、当時の選手たちには申し訳ないが、その差は歴然としていた。
それが今では全く遜色ない。
当時まだ二十代だった私ももう五十代後半。今の選手たちは、私の子供たちの世代。三十年経つと、目の前の風景は大きく変わる。
失われた三十年とよく言われるが、ことスポーツとカルチャーに関しては、日本が世界に大きく羽ばたいた三十年だったと思う。
ネイマールやメッシにしても、子どもの頃キャプテン翼をアニメで見ていたと聞く。
円安が進み、日本の経済力の地盤沈下ばかりがクローズアップされる昨今だが、スポーツ、カルチャーはまだまだこれから。次の世代の人たちには、好きなことを好きなように追求してほしいとドイツ戦の勝利を経て改めて感慨深く強く思った。