1970年に大阪で万国博覧会が開催された。私はその頃、大阪に住んでいた。まだよちよち歩きの頃だ。
万博のパビリオンは鉄鋼館を記念館として残すだけで、他は全て撤去されている。
太陽の塔の上には、屋根が架けられ、太陽の塔は屋根から突き出すように立っていた。
その屋根から、スポンジが大量に落ちてきて、それをいくつか拾って持ち帰ったことを憶えている。
既に50年以上が経っているが、鉄鋼館の展示を見ていると、当時の日本中に満ちていた上り坂を一直線に上昇していた時代の勢いを思い出す。
日本はオリンピックが終わった直後で、これからまだまだ発展するぞ、というエネルギーに満ちていた。
マイカーや、直線的な鉄の造形物や、ビル、それを象徴する丸目の新幹線があの頃の空気感を蘇らせてくれる。
とにかく、鉄っぽいものが未来的で、鉄鋼会社が人気企業だった時代だ。
今では、SDGsが尊ばれ、鉄よりは木、紙、自然に癒しを求める空気が醸成され、プラスチックは避けるべきものと考えられるようになった。
東京オリンピックの後で、大阪万国博覧会を開催したい、というのは、六十年代の活気を再び再現したいという思いが背景にあるのだろうけれども、果たしてどのような効果が生まれるのだろう。
オリンピックは平和の祭典としての役割があり、また、超一流のアスリートが競い合うところを見たいという期待がある。
万国博覧会で、果たして今何を見せるのだろう。当時より地球は小さくなり、海外旅行も手軽に行ける。日本のパスポートは世界で最も多数の国へ入国できるパスポートの一つとなっている。
東京に住みながら、まるで実感のなかった東京オリンピックであったが、大阪万国博覧会は、大阪の人たちにとって、ぜひとも有意義なものとなるよう願っている。