Just do it !

とりあえずやってみよう。考えるのはそのあとだ。


音のつぶつぶが見える

 子どもの頃から楽器を習っていたおかげで、音楽が人よりよくわかる。音の一粒一粒が見える。メロディーは波のように流れてくるが、そのひとつひとつは独立した音だ。さまざまな波が幾重にも重なり合って一つの曲を構成しているが、楽器が弾けるとその波を構成する一粒一粒を正確に音にして表していくことになるので、自然と一つ一つの真実の音の姿が立ち上がって見える。

 同じ曲でも、自分が演奏できる前と、その曲が演奏できるようになった後とでは、その曲の姿形が違って見える。噂で聞いていた性格と、実際に会って持つ印象と、深くお互いに知り合ってわかることと、家族になるほどの密度でふれあい知る音と、それぞれの姿は異なる。

 とても素晴らしい曲が聞こえてきた時に、これが弾けたなら、どんなに幸せなことだろうかと、想像する。そして、もしも弾けたなら、その曲の本当の姿をもっと深く知ることができるのに、と思う。

 この世にある曲の全てを知ることは叶わぬ夢で、またその美しい旋律は、なぜかその限界を知らず、常に新しいものが日々生まれていく。この世に数多あるのに、実に不思議なことだ。