Just do it !

踏み出そう。やってみよう。考えるのはそのあとだ。


モンゴル 夢から覚めるとき

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 九日をモンゴル国内で過ごしたうち、四日を草原で、五日を市内で過ごした。モンゴルへ来たら、ウランバートル市内は出来る限り滞在時間を短くして、可能な限り市外の草原へと飛び出すべきだ。

 でも、飛び出す手段があまりない。日本では見たことのないようなカオスな渋滞ラッシュを抜けることは外国人には難しいことだろう。レンタカーのシステムが整っているとは言えないところで、車を運転しようにも、手段がない。必然的にドライバーと通訳を手配して運んでいただくことになる。

 近郊区間を走る鉄道があるわけでもない。観光バスは見かけたが、長距離バス路線があるのかと言えば、草原を走る中で、停留所のようなものを見た記憶がない。あったとしても、外国人旅行者には利便性の高い乗り物ではないと思われる。そもそも、三百五十キロ離れたカラコルムまでの途中に、いわゆる水洗トイレのあるドライブインは二つあるかどうか。立ち寄ったドライブインのトイレは、入りきれない女性たちが、男子トイレになだれ込んで用を足していた。

 でも、だからこそ、一刻も早く草原を目指してほしい。草原にこそモンゴルの全てがある。野に放たれた家畜たち。狭い家畜小屋に押し込められて、牛舎や馬小屋の柱に繋がれた日本の牛や馬や羊は私たちの生き写しだ。所詮会社に飼われて生きることしかできないにせよ、その中では自由自在に動き回る自由は得てみたい。

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 明日また私はストレスだらけの人口密度が異常に高い東京に帰る。牛舎に繋がれた牛のような生活に自ら戻っていく。馬小屋の中の生活しか知らなければ、それはそれで幸せなことなのかもしれない。テニスコートほどの空間でぐるぐる回り全力を出し切ることが我が人生と納得しているならそれでも良い。でも、この時代の日本に生まれたその幸運を生かし、そのパスポートの力を使って、狭い牛小屋で息をひそめていることの愚かしさを、せめてモンゴルに見に行ってみてはどうだろう。

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 まだ草原から戻って二日しか経っていないのに、夢を見ていたような気分だ。あの夢のような世界を、私は明日になると目が覚めた時のように忘れてしまう。目が覚める前のまどろみの中で、またいつか、夢の続きを確かめに来たいと考えている。