家を売るのは大変だ

　私は今までに家を４回買ったことがある。２回は現金払い。２回は分割払い、つまりローン。

　現金一括払いというとたいそうなお金持ちのように聞こえるが、安い物件を買っただけのことで、お陰ですっかり元本割れの状態になっている。

　ローンが払えなくなったら家を売れば良いと、簡単に言う人がいるが、家を売るのはそうそう簡単なことではない。実に大変だ。

　広告を出して、見に来てもらう。そのためには家の中をモデルルームのようにピカピカに磨き上げる必要がある。ライバルは新築なのだ。ローンを組む時に、新築だとかなりの優遇措置がある。中古でそのような優遇措置を聞いたことはない。考えればすぐわかる。大規模開発のマンションのようなわけにはいかないはずだ。不動産仲介料だけでは、それほど利益があるわけがない。新築のようなわけにはいかないのだ。

　買いに来る人は、新築が高いから、中古で探している。つまり、できる限り安く買いたい。売る方はできるだけ高く売りたいと思っていても、その家を買う人は、大根を買うように簡単には買ってくれない。

　しかしながら、売れないと値段はあっという間に下がる。百万単位で下がっていく。

　買ってくれる人がいても、その人がローンで買う場合には、ローンの審査が通らなければ売れない。

　家の見学は、たいてい休日だ。休みを潰して、見学者を待たなければならない。その都度、家の中をきれいに整え、シンクをピカピカに磨き上げ、目につくものを捨てる。

　これを何度繰り返したことだろう。半年の間に何十組もの見学者が来て、申し込みがあり、ローンの審査が通らなかったり、印鑑を押す日に、ごめんなさい、キャンセルします、ということもあった。

　もう家を売るのは懲りた。なので、当面家を買うのもやめた。株なら売却すれば現金になる。家は早くても一ヶ月はかかる。

　ローンが払えなくなったら売れば良い、と言えるのは、売ったことがない人だ。株のようなわけにはいかないということだけは、覚えておいたほうが良い。

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