私と妻は性格がまるで違う。水と油だ。私は太っていて、妻は痩せている。私は適当で、妻は細やかだ。私はガサツだが、妻は丁寧だ。
違うから惹かれあったのかもしれないが、四半世紀も一緒にいると、考えることがどことなく似てくるから面白い。
今朝、散歩の途中でリュックを背中に背負って、フタを全面開放したまま歩いている人を見かけた。追いかけて教えてあげようか、と思ったら、追いかけて教えてあげようかな、とわたしがおもったことと同じことを口にして言った。
またある朝、紅葉が真っ赤に色づいて、一晩で様変わりしていたとき、綺麗だね、と同時にハモった。思わず笑った。
誰でも思うことではあるけれど、同時に同じタイミングで思うことが実に多い。だから、二十五年も続いているのかもしれない。
周りを見てみると、いつもパートナーの苦情を口にしている人がいる。そんな話を聞かされる側も苦痛だが、そんな人と一緒にいる本人は苦痛ではないのかな、と思ってしまう。別に倒錯したのろけ話をしているわけでもなくて、本当にそう思っているようなのだ。でも文句を言いながらわかれずに一緒にいるのだ。
両親と過ごしてきた時間をとうに超えて、妻と生きてきた時間の方が長くなっている。
他のことはうまくいかないことの方が多いけれど、パートナー選びだけはうまくできたと思う。これさえうまくいけば、人生大抵の事は乗り越えられる。
独身の頃を思い出すと、あの気楽さは捨て難いものはあるが、やはり結婚してよかったと思う。気の合うパートナーのいる人生は実に楽しい。
