竹富島の桟橋からまっすぐ歩き、どこまでもまっすぐ進むと、軽自動車一台がやっと通れるほどの小道に繋がる。両側は南方特有の曲がりくねった植物が生い茂り、どこまでも複雑に入り組んだ迷路のような空間が塞いでいる。
そのような密林の隙間から、ヒラヒラと蝶が舞い込んでくる。いくつもの蝶が、私の前を私を祝福するように、歩く方向を指し示すように舞い踊る。
これは亡くなった父か、叔父か。祖母、叔母。数え切れないほどの極楽色の蝶が乱舞する。
茂みの奥から、足音が聞こえる。誰だ。人の気配。でも、そこにはどこまでも続く幾重にも折り重なった木々が立ち入ることを禁じている。
やがて、その道は右の方に曲がっていく。そしていつしか舗装された道へと繋がる。それと時同じくして、蝶の乱舞は終わる。
夢を見ていたかのような、小径の散策だった。